Bootleg編集長、侍功夫の2012年ベスト8

みなさまいかがお過ごしでしょうか?Bootleg編集長の侍功夫です。
昨年は「Bootleg Basic」「Bootleg Alone」2冊刊行いたしました。おかげさまでBasicは売り切れ、最新号Aloneは好評絶賛発売中でございます。年末年始のお伴にいかがでしょう?新宿ビデオマーケットさんにて取り扱っていただいております。通販もありますが、お近くにお住いの方や年末年始に東京へいらっしゃる方はぜひ、お店に行って輸入DVD、ブルーレイをチェックしつつ一緒にご購入してみてはいかがでしょうか?
お買いものはこちらから。
http://www.video-market.net/vm/index.htm

そんな侍功夫今年のベスト8を発表します。

 1 アベンジャーズ
 2 私が、生きる肌
 3 おとなのけんか
 4 ボール:声をあげて
 5 キャビン
 6 ノウカ・ドゥビィ
 7 レミントンとオカマゾンビの呪い
 8 フラッシュバックメモリーズ3D

今年は劇場公開作でいまのところ120本。映画祭、特集上映で13本。DVD、ブルーレイで観た新作はカウント不能で何を見たか忘れました。たぶんインド映画とカンフー映画が20〜30本くらい。白石晃士監督の『コワすぎ!』とかチリのビジランテ・ヒーローもの『ミラージュ』あたりが印象に残ってます。
1位『アベンジャーズ』はお祭りのお神輿みたいなもんで、神様と天変地異のモンスターと戦争の英雄とロボットとグラマー美女スパイが一緒に出てきてはグウの音も出ないというか。それだけのキャラクターが出せるというところにあぐらをかかず、それぞれ見せ場があって楽しい映画になっているところも含め文句なく1位です。

なので2位『私が、生きる肌』は実質の1位なんですが、ものすごくボク個人の趣味的なチョイスです。根本敬の『生きる』に収録されている吉田佐吉と村田藤吉が物質移転装置で合体して吉田の尻に村田の顔がくっつくという最低下劣な漫画があるのですが、本作は吉田をアントニオ・バンデラスが演じていて、アートの域にまで到達した不条理なイジメを受ける村田が絶世の美女になっている。というような映画です。全く前情報無く鑑賞したのですが、中盤あたりから根本フィルターを通して見ていたのでめちゃくちゃ笑いました。ほんとに最低でくだらなくて、でも人間の本質をズブリと突いています。

3位『おとなのけんか』は1幕モノの舞台劇を映像化する際の教科書にすべき映画です。キャラクターが発するセリフとはうらはらな心象を画面構成に出したり、限られた空間をいかに切り取るかなどの判断が非常に手練た印象です。お話自体もすごく些細なのも良いです。ピカソ後期の、お皿に顔を書いていた時代のような、名匠が肩の力を抜いてひょいっと作った感じです。

4位『ボール:声をあげて』は「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」で上映されたパキスタンの映画です。父親殺しの罪で死刑にされる娘の、犯行に至る経緯をふりかえっていくという映画です。意固地で厳格で融通が一切利かない父親が、その頑固さゆえに裏社会につながっていく様子は『レクイエム・フォー・ドリーム』のようで心底恐ろしいです。

5位『キャビン』はしたコメ映画祭の映画秘宝祭りで『キャビン・イン・ザ・ウッズ』のタイトルでの鑑賞です。日本公開も決定していますが、アドバイスとしてこの先ありとあらゆる本作の情報をシャットアウトして鑑賞に臨むのをお勧めします。

6位の『ノウカ・ドゥビィ』も「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」での鑑賞です。バングラディシュ映画です。近年インド映画と聞いてイメージする映画とはかなり違います。音楽があり、歌もありますが非常に静謐な映画です。公開中の『レ・ミゼラブル』が裏切りと打算と偏狭さなど、非常にネガティブな感情の渦巻きがドラマティックさを生みだしていますが、本作は思いやり、慮り、人情などがすれ違い交錯してドラマになっているので不幸は不幸ですが、どこか牧歌的に見ていられるのも素晴らしいです。

7位『レミントンとオカマゾンビの呪い』はしたコメ映画祭の招待作品としての上映で鑑賞しました。フィリピンの映画です。オカマを見るとバカにせずにはいられないレミントン少年がオカマの魔術師に、良いころ合いの歳になったらオカマになる呪いをかけられてしまいます。そんなことはすっかり忘れ。レミントンくんも女の子が気になる青年に成長したある日、オカマばかりを狙った連続殺人事件が起こります。時を同じくしてレミントンくんは筋肉ムキムキの亡霊(!)に襲われ、頭以外、全身の毛を剃られてしまいます。さらに、少しずつオカマっぽい口調になっていく…… このままでは連続オカマ殺人鬼の餌食になってしまう!という話です。罪の度合に比例した罰を受けるホラー映画の法則の適用加減が楽しい傑作でした。

8位『フラッシュバックメモリーズ3D』は松江哲明監督の最新作です。オーストラリア、アボリジニに伝わる民俗楽器「ディジュリドゥー」奏者GOMAさんが交通事故で脳に受けた衝撃から、どんどんと記憶を失っていく外傷性の脳の機能障害になってしまいます。いち時はディジュリドゥーが楽器だということも忘れてしまいます。そんな中で少しずつ状況を把握し、新しい記憶をとどめていき、新しい人生を歩きだす様子を捉えたドキュメンタリーです。本作は3Dで製作されていますが、他の3D映画と決定的に違っています。映画がスクリーンの中で3つの層になっていて、一番手前に心象や状況を説明する字幕が。2層目にはGOMAさんのバンド「GOMA & Jungle Rhythm Section」のライブ風景が。一番奥の3層目には過去の映像が写っています。過去と現在、外見と内面、それぞれが全部一緒に混ざっているのを立体視で整理しているのです。題材、音楽、演出方法が奇跡のようにつながって合わさっています。3Dで描くことが必然的になっている点において、他の3D作品とは全くレベルの違う仕上がりになっています。

以上が今年の文句ないランキングトップです。多少順位が入れ替わっても別に構わないくらいの団子状態です。ちなみに以下に来る作品群は……
『ディクテイター 身元不明でニューヨーク』
ブロンソン
『ザ・マペッツ』
『ボス その男シバージ』
プロジェクトX
メランコリア
『フランケンウィニー
『ボーンズ・ブリゲード』
ミッドナイト・イン・パリ
桐島、部活やめるってよ
etc……
といった感じです。